月別アーカイブ: 2014年9月

長期修繕計画と修繕積立金について  Vol.4

~長期修繕計画の法的位置づけ~

みなさま、こんにちは 川崎・横浜・首都圏を中心に活動しているマンション管理士の横倉啓子です。

分譲マンションの長期修繕計画の内容や作成は法令等によって義務付けられているわけではありません。
基本的に管理組合の規約や総会の決議に基づいて作成されるものです。
分譲マンションの長期修繕計画について、平成20年6月に、国土交通省から「長期修繕計画標準様式」及び「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(ガイドライン)が公表されています。

国土交通省の標準様式は、管理組合において長期修繕計画の作成や見直しを行う場合の「参考」と位置づけられています。
標準的な修繕工事項目として、中項目19・小項目50に細分化し、それぞれについて概算工事費の算出根拠を明示する内容になっています。
長期修繕計画については、あくまで「修繕積立金(毎月の積立額)の裏付け」になればいいのであって、必ず国が公表している標準仕様を準拠して作成するというわけではありません。

次回はマンションの修繕積立金に関するガイドラインについてです。

長期修繕計画と修繕積立金について  Vol.3

~長期修繕計画と修繕積立金の歴史~

みなさま、こんにちは 川崎・横浜・首都圏を中心に活動しているマンション管理士の横倉啓子です。
今回は「長期修繕計画と修繕積立金の歴史」についてです。

昭和の時代に分譲されたマンションは、建物の維持管理について計画的に修繕工事を実施しないといけないことは理解していながら、「計画性」という概念がほとんどありませんでした。
また現在の長期修繕計画のようなものを根拠として、修繕積立金の算出はしていませんでした。
昭和時代の新築分譲の修繕積立金の積立額は、管理費の10%相当額に設定するようなことが当たり前のように行われていました。この積立額の設定方法は、全く専門性を伴わないものです。

【平成4年】
旧建設省(建設経済局及び住宅局)から、マンション分譲事業者(デベロッパー)はマンション分譲時に、購入者や管理組合に対し以下のことの周知に努めるように通達がされました。
管理業者(管理会社)は管理受託時に、マンションの実態に即した長期修繕計画の策定、これに基づく適切な修繕積立金の積立及び適時の劣化診断の実施の必要性に関すること。
そして、マンションの新築分譲において、購入者に対する「長期修繕計画の提示」と「修繕積立金の根拠」が示されるようになりました。

【平成9年】
マンション管理の分野において、旧建設省(建設経済局及び住宅局)から公表されていた中高層共同住宅標準管理規約(現在の標準管理規約)について、「長期修繕計画の作成や変更を管理組合の業務として位置付ける」旨の改正が行われました。

昭和、平成の初めに分譲されたマンションの場合、現在の修繕積立金が専門性に則って妥当かどうかを確認する必要が有ります。確認を先延ばしにしていると、修正にも時間がかかります。
でも、どこから手を付けたらいいのかわからないという、管理組合の役員の皆様は、是非お気軽にご連絡ください。

次回は「長期修繕計画の法的位置づけ」についてです。

長期修繕計画と修繕積立金について Vol.2

~修繕積立金の必要性について~

こんにちは 川崎・横浜・首都圏を中心に活動しているマンション管理士の横倉啓子です。
 
修繕費を積み立てずに、修繕工事を行うたびに、必要な費用を区分所有者から徴収して、工事費等の支払いをするような方法で対応することもできますが、非常に大変です。
例えば、150戸のマンションで、大規模修繕工事の予算が約1億3千万円だとします。
単純に1億3千万円÷150戸で、戸当たり約87万円の工事費が必要になりますから、総会の決議に基づいて期間内に全戸から87万円を修繕一時金として徴収することになります。
工事の実施は分かっていても、全員から徴収することが出来なければ、大規模修繕工事は頓挫し実施できません。
そうならないために、修繕に必要な費用、計画修繕の対象となる建物・設備などの部分、修繕の時期を、あらかじめ「長期修繕計画」として定めます。

修繕に必要な費用として一定の期間内に見込まれる合計金額を計画策定期間の月数(30年の場合は360)で除(÷)して1カ月当たりの費用を算出ます。
更にそれを専有部分の床面積の割合で按分して一戸当たりの費用として「修繕積立金の積立額」を算出します。
これを計画的に積み立てて将来の修繕の備えとして、区分所有者は管理費と共に毎月、修繕積立金を管理組合に納入します。

いつ頃、建物・設備のどこを、いくらぐらいの費用で、修繕するのかを長期的に把握し、その備えとして修繕積立金を計画的に積み立てることになることから、長期修繕計画には「修繕積立金の裏付けとなること」が求められます。

計画的な修繕工事はマンションの資産価値維持・向上にとって大切です。
しかし、あくまでも計画ですから、長期修繕計画どおりに杓子(しゃくし)定規に修繕工事を行う必要はありませんが、修繕時期が近づいたら劣化診断等を行って修繕工事を行うべきかを確認することが必要です。
 
次回は「長期修繕計画と修繕積立金の歴史」についてです。

長期修繕計画と修繕積立金について Vol.1

~管理組合の長期修繕計画作成の目的と意義~

みなさま、こんにちは 川崎・横浜・首都圏を中心に活動しているマンション管理士の横倉啓子です。

計画的な修繕工事はマンションの資産価値維持・向上にとって大切です。
長期修繕計画書は、マンションの建物・設備及び外構の資産価値の低下を防ぎ、快適な居住環境を維持し、さらには向上させるための指標として作成します。
どんな建物も時間とともに劣化し、性能が低下するのは避けられません。そこで新築当初の性能を出来るだけ失うことのないようにして、より快適で安全な住環境を維持することを目的としています。
建物の寿命は日常の手入れに左右されるため、定期的に維持保全に努めれば耐用年数を延ばすことが可能ですが、逆に手を加えず放置すれば耐用年数は短くなります。したがって長期的な展望にたって計画的に修繕を行う事により、建物を初期の性能に近い状態に保つ事が可能となります。
長期修繕計画書の作成目的は、将来に向けての維持・管理に関しての計画を見直すことにあります。
長期修繕計画書の作成は、一定期間の建物の維持・管理の指標となるだけでなく、総会においてその計画を承認してもらうことにより、共用部分の適切な管理について居住者間の合意を良好に形成する効果があります。また、それに伴う適切で無駄のない合理的な修繕積立金の額を予測する事も重要な役割となります。

次回は修繕積立金の必要性についてです。